相続税対策メモ

相続順位

  • 第一順位・・・配偶者と子(いない場合は孫)
  • 第二順位・・・親、祖父母
  • 第三順位・・・兄弟(いない場合は甥姪)

配偶者や子といった優先順位が高い人がいるにもかかわらず、飛び越えて孫に相続させるには、遺言か生前贈与するしか方法がない。先順位の人が一人でもいる場合、後順位の人は相続人になれない。

ただ、遺留分という優先順位が高い人に最低限確保されている相続分があるので、相続放棄をしない限りは孫へ全ての財産を相続させることは難しい。

相続税の課税基礎額

路線価(1㎡あありの土地の価格(千円単位))をもとにして相続税の時価を計算する。

路線価が「215D(千円単位)」で面積が100㎡の土地の場合、(215,000円 / ㎡× 100㎡) / 0.8 = 26,875,000円 0.8は年初から年末にかけて土地の値段が上がった場合に備えて土地の値段を2割だけ高めに設定しているとか。

Dは借地権割合であり、土地を貸していたりしなければ考える必要はない。

土地の敷地面積はkeisanなどを使って割り出すといい。なお、路線価が地図に載っていない地域については、固定資産税評価額×評価倍率で計算する。評価倍率は国税庁のHPより。

固定資産税と登記簿

固定資産税評価額(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税)は3年に1回見直し、相続税評価額=路線価(相続税、贈与税)は毎年見直しされ、公示価格(国土交通省地価公示)の70%が固定資産税評価額、80%が相続税評価額。

地目:宅地、農地(田と畑)、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野並びに雑種地があり、その年の1月1日の現況及び利用目的に重きを置き認定。

固定資産税と都市計画税の納税通知書の敷地面積と登記簿上の敷地面積が異なっていた場合は大抵は持っている(印刷してある)登記簿が古いもののことが多い。

市街化調整区域と市街化区域については、評価額の項に「調」や「市」等が書いてあることもあり、それで識別もできる。

課税標準の特例が以下

  • 住宅(小規模住宅)・・・住宅用地の200㎡以下の部分については、課税標準額を1/6にする特例措置
  • 住宅(一般用住宅)・・・住宅用地の200㎡を超える部分については、課税標準額を1/3にする特例措置
  • 住宅用地・・・住宅用地において特例措置の対象となる土地は、家屋の床面積の10倍までを限度とする。それを超えた部分には特例措置は適用されない。
  • 住宅(新築)・・・新築後3年までの一般住宅は120㎡まで1/2減額される。
  • 農地(市街化調整区域)・・・一般農地の区分の固定資産税の評価額は、単純に単価×敷地面積であり、敷地面積を評価額で割れば単価が導き出せる。この単価は市町村が負担調整によるなだらかな税負担の調整が行われているので毎年同じではない。ただ一般農地は宅地と違ってかなり単価が安く設定されている。
  • 農地(市街化区域)・・・宅地並評価なので高く設定されている。さらに細かい区分については割愛。

農地は農地法第三条により一定の基準を満たす農家にしか売ることが出来ないとされている。そのため、他の第三者に譲渡する場合は農地転用が必要となる。

農地転用できるかどうかは、例えば周りが田んぼに囲まれている地区は農地転用できないとか、家1件建てることが出来ないような狭い土地は住宅に転用することが難しいなど。

市街化区域と市街化調整区域

登記事項証明書にはこの事項は載らないので、各市町村のHPで確認する。(こうのとりっぷ群馬県の市街化調整区域マップ

市街化調整区域に家を建てることが出来る条件として、

  • 都市計画法第34条11号:市街化区域との境界付近のような土地であれば建築可能。立地基準
  • 都市計画法第34条12号:建築予定地と同じ市内の市街化調整区域に連続して20年以上住んでいる親族(6親等以内)が他にいる場合は例外として建築可能とする法律だが、昭和45年の線引き前から建築予定地である市街化調整区域を自己または親族が所有している場合は市街化調整区域に現在居住していることや20年以上の要件はない(詳細は法第34条12号(線引き前所有と集落内分家)の要件)。立地基準
  • 都市計画法43条(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限):市街化調整区域には原則として住居を建築することはできませんが、市街化区域から1km圏内や市街化区域まで4mの道路がつながっている場合などは申請により建築可能になる。34条の基準を守り建築するための建築許可
  • 農地転用:地目が田や畑になっている不動産を農地という。市街化調整区域にある農地を売るには、農業委員会の許可が必要。農地を農地以外の用途に変える事を「農地転用」という。地目は雑種地でも取り扱い自体は農地として扱われる。 「農林漁業を営む者の居住用建築物」は開発許可が不要です。そのため、農家の人なら自宅を普通に建てることができます。

がある。第34条11号と12号はどちらか一方を市町村がその場所に指定していて、どちらを使うかどうか、どちらかが使えるかどうかは市町村の建築担当課に聞かないとわからない。

パターンA(群馬県板倉町)

  • 土地(243.92㎡(約74坪))の固定資産税課税評価額・・・426万円の200㎡は1/6、44㎡は1/3されて、83万9500円
  • 建物の固定資産税課税評価額・・・366万5500円

この土地は相続税路線価がなく、評価倍率が1.1倍だったので、相続税評価額は土地は92万となる。建物は1.0倍なので、366万となる。

合計の相続税評価額は458万円。

固定資産税は、固定資産税評価額×1.4%が標準(農地は課税評価額が1/3計算?)なので、この資産であれば固定資産税は458*0.014=約6万3000円で、都市計画税はこの都市にはなかった。

パターンB(埼玉県鴻巣市)

  • 土地の課税評価額・・・
    • 124部分・・・敷地面積は1283㎡、地目が宅地、路線価は42Eの市街化区域なので、1283*42000*0.8=4093万円。軽減税率で200㎡までは1/6、残りの1083㎡(家屋の床面積の10倍以内)は1/3できて1258万円となる。
    • 以下全て路線価なしの調整区域で、固定資産税評価額の宅地は1.1倍、農地は0.95倍すれば相続税評価額になる
    • 510-1部分・・・敷地面積は389㎡、地目が田(雑種地)で、固定資産税評価額は114万円(単価2930円/㎡)
    • 511-1部分・・・敷地面積は1304、地目が田(雑種地)で、固定資産税評価額は382万円(単価2930円/㎡)
    • 70部分・・・敷地面積は1191㎡、地目が田で、固定資産税評価額は11万円(単価92円/㎡)
    • 70-1部分・・・敷地面積は265㎡、地目が宅地、固定資産税評価額は256万だが、200㎡までは1/6、それを超える部分は1/3して53万円へ(相続税評価額はは評価倍率1.1なので256万円×1.1が課税評価額)
    • 70-5部分・・・敷地面積は171㎡、地目が田で、固定資産税評価額1万4000円(単価81円/㎡)
    • 70-3部分・・・敷地面積は2.97㎡、地目が田で、固定資産税評価額258円(単価86円/㎡)
  • 建物の課税評価額・・・395万円(209㎡=63坪)→解体費用を3万/坪とすると、解体費用は200万円。

田の現況が雑種地になるだけで単価が跳ね上がり、固定資産税評価額が上がる。

農地を農家に売るとして、登記費用(登録免許税)は土地値段のの1.5%、そのほか司法書士への費用で10万とか。土地の売るときの売価は路線価等を参考にするといい。そうすると70部分は1191㎡もあるのに11万円で、登記費用が1万5000円で売ってもいくらにもならず、売った金額で司法書士の費用を払う感じか。

70-5部分のように家が1件すら建たない場所を市町村が無償でもらい受ける可能性は低い。かといって農地転用も固定資産税が上がるのでメリットがないし難しい。物置を置いているのをばれたら雑種地にされて高くなる可能性もあるからもう畑として使うしかない。

70-3も使い道がないのでもらってくれない。

なぜ70-5と70-3も70-1を都市計画法第34条の12(線引き前)を使用して宅地にした時に一緒に宅地にしなかったか?おそらく調整区域を宅地にするときは必要最低限の敷地のみしかできなかったせいではなかろうか。

パターンC(埼玉県加須市)

  • 土地の課税評価額・・・上記サイトより敷地面積は約4120㎡(1248坪)、路線価は33Eなので、4120*33000*0.8=1億877万円位
  • 建物の課税評価額・・・不明

相続税を減らせる控除等

  • 基礎控除・・・3000万円+600万円×法廷相続人の数(相続放棄した人の人数も含む)
  • 配偶者控除・・・1億6000万円以内は非課税。一次相続で配偶者に全ての資産を相続させることは可能。遺言があっても相続人らの合意が得られれば。
  • 住宅取得金額控除・・・子や孫への住宅取得資金(省エネは1500万円、それ以外は1000万円まで)非課税。不動産取引は除く
  • 妊娠・出産・育児費用控除・・・子や孫への妊娠・出産・育児費用(保育料含む)の金額が1000万まで
  • 教育資金控除・・・子や孫への教育資金(学校に直接支払う場合1500万、それ以外500万まで)
  • 小規模宅地の特例・・・333平方メートル=約100坪までの居住用宅地に限り、相続税計算のための評価額を80%減税できる。注意点は、
    • 配偶者であれば特別で無条件
    • 配偶者以外の同居の親族の場合、申告期限までに土地の所有と居住を継続した時に限る(所有と居住継続案件)。期限までに売却した場合は無効の可能性あり。
    • 上記以外の親族(同居していない親族=家なき子特例)の場合、相続開始日の直前3年以内に持ち家に住んだことがない別居親族が相続し、申告期限(10か月以内)までその土地の所有を継続しなければならないという制約がある(所有案件のみで居住案件はない)。
  • 居住用財産の3000万円控除・・・生きているうちに居住用財産を譲渡した時に控除できる。なお、譲渡する建物の一部が建物の建っている部分ではなく、庭先である場合はこの特例は適用できない。譲渡後にその場所に住めなくなる状態が必要。取り壊して売る場合であれば土地だけでも控除を使えるが、壊してから1年以内に譲渡契約を行う必要がある。
  • 暦年贈与・・・1/1~12/31までの1年間で110万円以下であれば贈与税がかからない。ただし、贈与の度に贈与契約書を作成すること、3年以内(2023.12.31まで。それ以降は7年)以内に死亡した場合は相続財産に加算される。
  • 生命保険の非課税枠・・・生命保険金は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、受取人が配偶者だと1億6000万円の非課税枠を有効活用できないデメリットがある。
  • 相続時精算課税制度・・・60歳以上の父母/祖父母から20歳以上の子や孫への贈与が2500万円まで非課税になる制度。2500万円分の贈与税が控除されるものの、相続時に加算され非課税枠を超過した場合に相続税として支払う必要が出てくる。住宅資金は上記控除が使えるし、非課税枠をを超過するほど資産を持ち、住宅以外の資金を贈与したいが相続まで待ってられない時とかに使用かな。暦年贈与と併用できないことに注意。
  • 金融機関からの借入金は負の資産として相続時にプラスの資産から差し引ける。一般に現金よりも建物の方が評価額が小さくなる(土地建物の相続税評価は、建築購入価額の半分ほどで評価されるため)ので、借入金でアパートを建てて置くのは一つの相続税対策。

相続税の税率

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税対策シミュレーション

パターンA(群馬県板倉町)

土地、建物の相続税評価額は458万円。

この場合は、基礎控除内に収まるので特に相続税は考えなくて問題ない。

不動産を相続した場合には、原則として不動産取得税(固定資産税評価額*3%)はかからない(登録免許税はかかる?生前贈与等、相続時精算課税制度の場合もかかる)。

パターンB(埼玉県鴻巣市)

土地、建物の相続税評価額は5261万円位とする。プラスで現金や車などを合わせて6000万円とした場合を考える。

  • 全員マイホームを別に持っているので小規模宅地の特例は使えない。相続税評価額は6000万円のまま。
  • 相続人は配偶者と子供3人=4人なので、基礎控除は3000万+2400万=5400万円。相続税評価額は600万円へ。
  • 1/2の300万円が配偶者へ、1/6の100万円ずつが子。
  • 配偶者の仮の相続税額は300万×10%=30万円、子供一人当たりの仮の相続税額は100万×10%=10万円。合計60万円。
  • この仮の相続税額合計の1/2の30万が配偶者→配偶者控除(1億6000万まで非課税)で非課税
  • 1/6の10万ずつが子供たちへ→非課税枠はないのでそのまま支払う。よって子供一人一人は1000万もらって10万支払う感じ。

そして、配偶者の方もなくなった場合を考えると、配偶者の資産は前回半分引き継いでいるので3000万円として、

  • 全員マイホームを別に持っているので小規模宅地の特例は使えない。相続税評価額は3000万円のまま。
  • 相続人は3人なので、基礎控除は3000万+1800万=4800万円。相続税評価額は0円へ。
  • 基礎控除で賄えるので子供一人一人が1000万円ずつもらうだけ。ただし、土地を土地として相続した後に譲渡した場合に20%の所得税や住民税がかかるので、配偶者が生きているうちに第三者に売って(壊して売るなら1年以内での譲渡が必要。居住部分に関係ない部分を売るのはダメ。売った後に住めなくなることが条件)おけば3000万円は控除できる。

死ぬまでそこに残ることを考えたら3000万円控除は無視。

第一段階の相続税を0にするためには少しずつ暦年贈与していく形になる。

土地をいつ売るかに関しては、多すぎる土地は固定資産税の支払いが大変になるだけなので、譲渡所得として所得税とられるが、基礎控除を上回る部分でもいいので先に売って現金化してから暦年贈与のほうがいいのか。

パターンC(埼玉県加須市)

土地、建物の相続税評価額は1億2000万円位とする。プラスで現金や車などを合わせて2億とした場合を考える。

  • 2億-5400万(基礎控除)=1億4600万が課税資産で、1/2の7300万が配偶者、7300/3=2433万が子。
  • 配偶者の仮の相続税額は「1億4,600万円(課税遺産総額)× 2分の1(法定相続分)× 30%(相続税率)-700万円(控除額)=1,490万円」となります。子供の1人当たりの仮の相続税額は「1億4,600万円(課税遺産総額)× 6分の1(法定相続分)× 15%(相続税率)-50万円(控除額)=315万円」。仮の相続税額の合計額を相続税の総額という。
  • 相続税の総額は「1,490万円(配偶者の仮の相続税額)+315万円(子供の仮の相続税額)×3(子供の人数)=2,435万円」
  • ここから、この相続税の総額をもとに各人の実際の相続割合により各人の負担する相続税額を計算。配偶者の相続税額は「2,435万円×2分の1=1,217.5万円」。子供1人当たりの相続税額は「2,435万円×6分の1=405.8万円」。
  • 配偶者の法定相続分が1億円(2億円×2分の1)となり、1億6千万円以下となるため、配偶者控除を使うと、配偶者の相続税額は0円となる。1,217.5万円あった相続税額が0円となる。

仮に、マイホーム購入資金を1500万円援助してもらったり、孫に遺言で土地を相続するとすれば、前者では750万の15%である112万の節税、後者では2000万円の土地であれば小規模宅地の特例で400万カウントになり、1600万円浮き、120万位の節税かな。

どちらにしても大した節税にはならないため、使わない土地(固定資産税支払いだけでお金にならない土地)は早めに貸すか売るかして現金化して、暦年贈与や他の控除がある贈与で節税したほうがいいきもする。

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